森橋ビンゴの作品は、だいぶ昔に読んだ「三月、七日」以来。初々しい恋物語から一転、許されない恋だとわかり、それでも歩んでいく、ちょっと切ないストーリーだったと記憶している。

あれから何年たっただろうか。久しぶりに手に取った森橋作品もやはりちょっと切なさを感じる恋物語。
性転換キャラや、いわゆる男の娘ものはコメディチックな作品ではよく見かけるものの、シリアスな内容で性同一性障害というものを扱った作品は私の読んだ中ではすぐには思いつかない。

見た目はイケメン。言動も行動も男性的で、裸でも見ない限りは女性とはわからない織田未来。良く笑い良く怒り、何事にも積極的。男とか女とか関係無しに友人になったら楽しいだろうなと思う人物。強烈な姉たちのせいで女性がトラウマになっている四郎が、(最初こそとまどったものの)仲の良い友人としてつきあえているところからもそう感じる。
全くの平穏というわけにはいかないものの、そんな親友同士の日常を楽しみながら、徐々に四郎の胸に芽吹く感情。この巻だけでもきれいに終わっているが、どうやら続きもあるらしい。この後2人の関係がどう続いていくのか、やはり気になってしまう。

この作品の個人的なもう1つの魅力は、舞台が広島であることか。東京から移り住んで、言葉が通じないという感覚は私にも経験がある。それを少しずつ覚えていくのもまた楽しい。
土地ごとの雰囲気の出る方言は好きだが、中でも広島の言葉は温かみを感じる。それに広島の言葉を話す女の子はなんだかかわいい。
広島弁を話す本作のもう一人のヒロイン三好の恋路も(すでに暗雲立ち込めている気がしないでもないが)応援したい。

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